里山長屋暮らし~藤野プロジェクト
環境問題を突き詰めたら、シェアリングの重要性が見えてきた
「設計に関しては、環境に配慮すべき基本的なことはやっています」と山田さん。ここで言う基本的なというのは、地元産の木や土に還る材料を使うこと、太陽熱集熱装置による暖房、パッシブデザインによる蓄熱や薪ストーブなどによる自然エネルギーの利用、コンポストトイレの設置や雨水利用などなど。最新鋭の太陽電池や発電パネルや燃料電池を使うことはせず、各戸をコンパクトサイズにして使用エネルギーを抑えたり、生ゴミのコンポスト化をするなど、自然を上手く利用した循環型の仕組みが考えられている。しかし、彼らは声高にその機能性を謳うことはない。
「当初は、マイナス6%なんて生ぬるい、私たちはチームマイナス80%だ! とか言っていたんですけどね」(恵里奈さん)
しかし、環境のことを思えば思うほど、「エコな生活ってみんなでやらないと、本当のエコにはならないんですよね。自分だけよければいいというのではない」(美佳江さん)と気づくことになったのだという。確かに同じ地球上に暮らしているかぎり、「共に生きる」ということからは、逃れられないのだ。
美佳江さん曰く「私は個人的に自給自足的な暮らしを目指していました。でも自分たちだけ自給していればいいのかって気づいた。だったら、みんなで楽しくというのがいいんじゃないかと。里山長屋暮らしが、どんな暮らしなのか見ることが出来たら、周りに人も分かりやすいですしね」。
「環境問題やエネルギー問題を解決していくためには、世の中が変わっていかなくてはいけない。変わった世界が、楽しそうだったらみんな変わっていくでしょう」(池竹さん)
同じ視点が持てたことが、プロジェクトの強固な素地をつくった
なぜ彼らは、こうしてプロジェクトを立ち上げ、家づくりをオープンにし、訪れる人と共有することができるのだろうか。
実はそこには、小林さん夫妻、池竹さん、小山さん夫妻、山田さん夫妻のある共通点が関わっている。それは、パーマカルチャー。この4世帯のなかで、るなちゃん(3歳)以外の大人7名は、パーマカルチャー講座の受講生の先輩・後輩の間柄であり、先生・生徒の関係でもあるのだ。
パーマカルチャー(以下PC)とは、世界各地の伝統的な暮らしの知恵をベースにオーストラリアのビル・モリソンらが提唱したと言われている。日本語では「永続可能な農的生活」と訳されている。簡単に言うと、いかに自然の循環(エコシステム)と同調し、自らの生活をその中へ組み込みながら、永続的に暮らしを営むかをデザインしていこうとするもの。その学びの領域は、土壌学から、建築、植物、エネルギー、コミュニケーションなど多岐にわたり、池竹さんは植物学の、山田さんは建築のプロフェッショナルとして、パーマカルチャーセンタージャパン(以下PCCJ *3)にて、教鞭を取っている。
「メンバーがPC塾卒業生であるということは、このプロジェクトを進める上で、一番の強みになっていると思います。視点が同じという感覚でしょうか」(山田さん)。
同じ釜の飯を食べた仲間(PC塾では月に一度一泊二日で年10回の講座を受ける)、共に学んだ体験は、メンバーの絆を強くし、社会にその学びの成果をより還元しようという意思も育んだようだ。
また、メンバー一人ひとりが、経済的にも精神的にも自立していることも、重要な要素かもしれない。今年4月に玄さんは出版社を退社、これからはフリーランスで編集やライター業をしていくという。一紀さんも環境・持続可能性の専門家としてプラニングや企業のコンサルティングを生業とし、基本的には家で仕事ができる。池竹さん、山田さんも同様だ。どのメンバーも、基本、個人事業主として自分の采配で仕事をしていける状況。いざとなれば、一時間少々で東京まで行けるのだから、ちょうどいい距離感とも言えるだろう。しかし、通いではなく、ベースを自然に近い場所にできたということは、通いとはまったく違う感覚や可能性をもたらすはずだ。
