トージバ・大豆レボリューション
大豆を選んで大正解。現代の百姓一揆は大豆からはじまる
ここまでしつこく仕組みについて書いてきたが、それだけでは、こんなに多くの人がトージバのイベントに参加することはないだろう。渡邉さんのセンスがいいところは、きっと大豆を選んだところにあるのだと思う。
「大豆を語らせたら、長いですよ~(笑)」と言うほど、渡邉さんは大豆に魅せられているし、事実大豆というのは奥が深い穀物である。
トージバの大豆レボリューションで育てられている大豆は、種やさんやお店で売っているフツー大豆とはちょっと違う。昔から地域ごとに育てられていた「地大豆」と総称されているもので、その土地の気候や風土にあったものだ。
「米じゃなく、なぜ大豆を選んだかといえば、まずは農作業を集約でき、手間が比較的少なくて済むというところにあります。しかも、我々の植えているのは地大豆です。この地大豆はその土地で生き延びてきた品種ですから、通常の大豆のように農薬を撒かなくても、遺伝子組み換え大豆じゃなくても、しっかり育ってくれる。また、加工のレパートリーも多いのも魅力です」
確かに、味噌はもちろん、豆腐や豆乳、油揚げ、おからだってできる。大豆自給率が低いことを考えても、国産の安心して食べられる大豆を育てられるというのは貴重な経験だ。
「自分たちで育てた大豆を味噌にするっていうのもいいんですよ。まさに手前味噌です。僕たちの手の中にある酵母菌が、味噌の中で増殖し、それをまた家族で食べる。これが体を浄化してくれる、まさに家族の味になるんです」
さらに、「日本大豆の在来種は、1000種類もあるといわれています。名前が分かっているだけでも300種類あるんです」と渡邉さん。
地大豆のひとつ、幻の大豆といわれる山形県川西町の「紅大豆」をいただいた。見た目は、大豆とは思えない、小豆かと思わせるような色。滋味深い味わいは、茹でただけでも旨みが舌を離さない。昔の人はこんなにおいしいものを食べていたのかと驚かされると同時に、いかに日本が地域ごとに違いがあり、個性豊かなのか、大豆を通して感じることができるのだ。
大切なことは、土と畑が教えてくれる
大豆レボリューションに参加する人には、どんな人かと聞いてみると、思いのほか、ひとり参加も多いという。
「心の中で『もういやだ!』って叫んでいる人ですよ(笑)。やっぱり現代人は、バランスを崩しているひとが多い。僕は、それを解決できるのは、土だと思うんです。畑仕事って、そこからどれだけの量の作物を収穫するかに目が向けられていますけど、実は、土に触れること、作業で汗を流すことは、人間にとってすごく重要な行為だったんじゃないかと思うんです。毒素排出しエネルギーを得る、まさに『アース&チャージ』できるのが土」(渡邉さん)
「ここにはタネを撒き、草むしりをし、収穫し、脱穀し、味噌作ってという半年をかけたサイクルがあります。そこに参加する人たちは、一回会うだけの関係じゃない。だからこそ、仲間をつくり、作業後には飲み語らい、恋愛もするんです。汗まみれの男と女なんて、ものすごくセクシャルじゃないですか!(著者註:すでに4組のカップルが結婚したとか)そこで、我々は何をつくっているかというと、時間と空間をつくっている、それが最終商品なんですよって、藤本敏夫さん(*1)は言ってましたけど(笑)、まさにそうなんですよ」(ハッタさん)
農家の方や仲間との交流、作業後のおいしいご飯。こうした体験が、「自分の中で離れがたいことになって、人生の一部になって」いくのだと、ハッタさんは言う。
「ただタネ撒いて、農作業するだけなのにね、変わるんですよ人生は。みんなもういい大人なんだから、そろそろこういう世界があるということに気づかないと」(ハッタさん)
食糧自給率やエネルギー問題、農家の疲弊や心の問題。目の前に横たわる問題は多々あるけれど、その深刻さに気づくのは、決して頭だけでは充分じゃない、いや、体のほうがよりダイレクトに反応してくれるのかもしれない。
