ロールモデルはオープンソース運動の先駆者
ソーシャルデザインはコミュニティを育む。そして、コミュニティを維持し、活性化するために必要な資金は、参加者から活動組織にもたらされるのが通例だ。しかし、組織の中心を担う人間が、このお金で生計を立てることなど、まずあり得ない。個人の持ち出しにならずにやっていくので精一杯、というのが「成功」と言われる活動の多くに見られる状況だ。
一方、もし資金が潤沢になったとしても、余剰が個人の取り分になるか、といえば、それもほとんど考えられないのではないか。活動の幅を広げ、質を高めていくのに使われるのが、現在の日本のソーシャルデザインの趨勢だ。個々の中心メンバーは、独自の理念を生かした執筆・講演、専門に基づく企業・行政からの受注など別の収入源を持っており、ソーシャルデザインの実践を通じた世評は、その収入を確実にし、価値を高める「広告」的な意味を持っている。
これは、過去10年余りソフトウェア業界を席巻してきた、オープンソース運動のモデルに連なる。たとえば、Linux。この開発プロジェクトが、IBMをはじめとする多くの巨大IT企業のポートフォリオに甚大な影響を与え、産業再編成のきっかけを作ったことはあまりに有名だ。そして、この開発をリードしてきたLinus Torvaldsは、Linuxの開発そのものではなく、著書や講演、Linuxを用いた応用システムの開発などを通じて収入を得る道を選んだ。Linusをはじめとするオープンソース運動の先駆者たちは、ソーシャルデザインの実践者にとって、貴重なロールモデルとなる人々なのかもしれない。(田)


